狭いが勝ちか、スプレッド競争の臨界点-SBI FXトレードのケース 

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日本のスプレッドは“おもてなし”精神

 日本のFX会社の取引高は世界的に見ても非常に多い。2013年6月にGMOクリック証券やDMM.com証券の取引高が1兆ドルを超えた時には世界的に大きなFXのニュースとなった。取引高が増加した背景には、「狭いスプレッド」が挙げられる。顧客へのサービスとして一番眼に見えやすいのがスプレッドを狭くすることなのである。海外のFX会社と比較して、非常に狭いスプレッドは、日本のFX会社特有の顧客への“おもてなし”精神の表れと言ってもよいかもしれない。

image_report このスプレッド競争、いったん始まったら、まるで狂想曲のように激化して行った。特に、2012年、スプレッド競争は熾烈を極めた。その火付け役となったのが、2012年5月にFXを開始すると同時に米ドル円0.19銭のスプレッドを打ち出したSBI FXトレードである。そして矢継ぎ早に、8月には30万通貨までのスプレッドを0.39銭へと縮小した(注:同社は、1通貨単位から取引可能で、スプレッドは注文数量が少ないと狭く、多いと広がる仕組みを取っている)。

 SBI FXトレードに煽動されるかのように、同じ8月、GMOクリック証券、DMM.com証券の両社とも米ドル円のスプレッドを0.3銭に縮小した。すると、8月後半には、SBI FXトレードは米ドル円のスプレッドを、1万通貨までを0.15銭、30万通貨までを0.29銭へと引き下げ、さらには2013年2月に米ドル円のスプレッドを0.1銭まで縮小させた。

 しかし、2013年7月になると、SBI FXトレードとGMOクリック証券は米ドル円のスプレッド拡大に動いた。SBI FXは0.29銭(1万通貨以下の取引)に引き上げ、GMOクリック証券は0.4銭に引き上げたのだ。このスプレッド拡大という、コペルニクス的転回の事象に戸惑った方も多いはずだ。たぶんほとんどの人が、もうスプレッド競争も限界に来たため、拡大方向に動いたのだと感じたのではないかと思う。

 そして、10月、SBI FXトレードは米ドル円(1万通貨以下の取引)を0.27銭に、11月には豪ドル円(1万通貨以下の取引)を0.77銭に縮小した。GMOクリック証券も豪ドル円を0.8銭に、そして12月には米ドル円を0.3銭に縮小している。再び、果てしないスプレッド競争が始まるのか? 

 近年のスプレッド競争を先導して来たと言っても過言ではないSBI FXトレードにこういった同社の最近の動向の背景について話を伺った。

良過ぎるスプレッドの弊害

 SBI FXトレードの藤田行生取締役は次のように説明する。
JP_SBIFXTrade「7月にスプレッドを拡大したのには、主に2つの理由があります。一つは当時の取引流動性の著しい低下により急激な相場変動が続いた外国為替市場において、インターバンクですら適正なプライス形成が難しくスプレッドワイド化も半ば恒常的になっていた。こういった状況下では、会社として低スプレッド提供に努めつつも、マーケットの実勢に照らした最低限の見直しを行う必要があったこと。そしてもう一つは、仮名・借名口座と思われる手法で、当社の取引数量別スプレッドを悪用した取引(複数口座を用い、狭いスプレッドを狙った注文を一斉に行う等)が同時期において急増したことがあります。当社のお客様の注文は親会社のSBIリクイディティ・マーケット(以下、「SBILM」)を通じてインターバンクでカバーしていますが、これらの取引により、想像を超えるような大口のフロー(顧客注文)が出てしまい、またそれを市場に出すことによって、更に市場を動かしてしまうという悪循が生じました。当社としましては、お客様にマーケットの実勢に比べ、格別良いスプレッドを提供し続けていたため、かえって当該悪循環を惹起してしまったのではないかとの反省もあり、フローを管理し市場を落ち着かせるために、マーケットの実勢に照らしたスプレッドの見直しを行うという英断に踏み切ったのです。」

 では、直近10月のスプレッドの縮小はどういう理由なのか。「当社は可能な限りのスプレッドを提供するという方針に変りはありません。7月にスプレッドを拡大したおかげで市場が落ち着いて来ましたし、ドル円も100円台に乗せてきましたので、年末に向けてお客様に何かできることはないかということで、また縮小することにしたのです。」(藤田取締役)

 こういった経験を積んで、健全な市場を維持するための万全な管理体制を再構築し、工夫もこらした。企業秘密だそうだが、カバー先であるSBILMでは単純にカバーするだけでなく、カバー率を下げずに効率よくカバーできるスキームを有しているという。

FX会社同士で互いにインスパイアしあい切磋琢磨してFXの世界を盛り上げて行ってもらえれば、個人投資家も気軽に安心して取引が出来るというもの。

しかし、FXが誕生してほぼ15年。そろそろ“スプレッド”主流から新たなストリームを形成して行ってもいいような気がする、スプレッド競争で業界全体が疲弊しない前に。

■関連記事
第1回:狭いが勝ちか、スプレッド競争の臨界点-SBIFXトレードのケース『日本のスプレッドは“おもてなし”精神』
第2回:狭いが勝ちか、スプレッド競争の臨界点-SBIFXトレードのケース『良過ぎるスプレッドの弊害』
第3回:狭いが勝ちか、スプレッド競争の臨界点-SBIFXトレードのケース『スプレッドと収益性のバランス』

この記事はFX Spokesmanのオリジナル記事を編集したものです。

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